死ぬまでにしたい10のこと

出演:サラ・ポーリーマーク・ラファロスコット・スピードマン、レオノール・ワトリング、デボラ・ハリー、アマンダ・プラマー、マリア・デ・メディロス、アルフレッド・モリーナ、ジュリアン・リチングズほか
脚本・監督:イザベル・コヘット

悲しく描いているわけではないのにずーっと悲しい。ずーっと切ない。
自分がもうすぐ死ぬことを誰にも言わずに生活するアンの心情を察すると本当に泣けてくる。自分でも少し意外だけど、最初のほうのシーンでまさしくこの映画のタイトルごとく、コーヒーショップで「死ぬまでにしておくこと」?をノートに書き綴るアン。そのシーンがもの凄く悲しくて、辛かった。そこで私は泣いた。なぜだか分からないけど、涙が流れた。だって当たり前のこととか、思い切ったこととか、ごく普通の希望とかを書いていて、それがなんだかすごく切なくて一人ですべてを抱えこんでいるアンが可哀想で仕方なかったから。‘娘達に毎日愛してると言う’とかさ。
誰にも言わないって決めた彼女の決意に感動した。夫へのカセットテープを作っているときに言っていた「それがプレゼントだから」っていう表現を聞いて更に悲しくなってしまった。
二人の娘に18歳までメッセージを贈ると決め、次々にカセットを作っていくアン。これがまた辛い。自分が存在しない未来のことを思って、考えて、メッセージを残す。どんな気持ちなんだろう…
このストーリーはあくまでもアンからのみの主観であり、アンから見た世界や家族を描いているので悲しみが倍増しているのかも知れない。彼女(アン)がこの先もずーっと当たり前に存在し続けるんだと普通に思っている今までどおりの家族描写があるから、更に辛いんだと思った。アンの夫や二人の娘達。アンの母親や刑務所に入っている父。そして、職場の友達や隣りに引っ越してきた同じ名前のアン。みんなアンの余命のことなんか知らないから、変わらぬ毎日を過ごしてる。
結末はアンが死ぬ描写があるわけでもなく、悲しむ周囲の人たちを映すわけでもなく、あくまでもアンの人生として描いたためか、アンの人生が静かに幕を下ろしたように映画も終わっていった。それがすごく良かったです。
また副題っていうのかな?その‘my life without me’っていうのがすごく意味深な言葉で好き。

死ぬまでにしたい10のこと [DVD]

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