愛という名のもとに

出演:鈴木保奈美(藤木貴子)、唐沢寿明(高月健吾)、江口洋介(神野時男)、洞口依子(飯森則子)、石橋保(塚原純)、中島宏海(斎藤尚美)、中野英雄(倉田篤)ほか
第1話「青春の絆」
尚美を助けた時男がみんなに語った熱い言葉はあまりにも真っ直ぐで正しくてストレートに人の心を打つ(どっかで聞いたフレーズだなと思ったら鍋島勇二郎でした)笑
変わっていないのは時男だけだった。いや、他のみんなも変わってしまったのではなく忘れてしまっただけだった。
最後の貴子のナレーション。
「真っ先に口を開いた者が一番寂しかったんだ。誰もがそう思って口を利けずにいた」
恐ろしいほど共感できてしまう切ない言葉です。仲間なのにね。だったら仲間って一体何なんだろう?
第2話「夢を追って」
貴子が健吾と喧嘩をして、時男に「父を亡くしてボロボロになった母の姿を見ているから、自分は男が人生のすべてにはしたくない」などと相談したときに「そうゆうこと話してやれよ。健吾に全部話してやれよ。お前が泣きいれなきゃ、あいつだってお前の前で泣けないだろう?」といった時男のアドバイスが、凄く当たり前のことなんだけど、ものすごい大切なことのように聞こえた。
噴水前での純のセリフ。
「ちゃんと目指してたら作家になれたんだっていう、そうゆう言い訳を、ずっと歳とってからも言えるように押入れの隅に隠してた。諦めたのは叶わないことじゃなかったってゆう卑怯な言い訳を、自分に残すためだったんだ。俺は誰でもない!他の誰だっていいんだ!今日が昨日でも明日でも変わらねぇ。そうゆうつまらない人間なんだよ!」
これは聞いていてかなりつらい内容なんだけど、こんなふうに悩んでる人って多いんだろうなって思う。私自身、小さな夢を諦めたとき、その度に心の奥底で感じる開き直りみたいなものがあって、それはきっとこういうことなんだろうと思う。
時男「なんかさ、やっと最後に回帰祝いらしくなったじゃん!良かった良かった」
チョロ「誰のせいで暗くなったんだよ?!」
時男「え、誰?」
一同「おめーだよっ!」
ってやりとりがなーんか微笑ましくていいなと思った。
最後の貴子のナレーション。
「今日という日が明日や昨日とは決して違う‘今日’という日にするんだ。きっとそれが私達が生きているということなんだ」
うーん、なるほどね。確かにそのとおりです。夏休み真っ最中で毎日ぐうたら過ごしている私は、もはや生きてるとは言えないのかも知れません(笑)
第3話「隠された青春の日々」
この回から若き日の深津絵里さん登場です。将来こんなに綺麗に変貌するとは想像もつかない容姿です。涼しい顔して時男に不感症だとか言っちゃうし、不思議なキャラです。このシーンの時男、なんか寝起きな感じが妙に色っぽい。髪が女みたいに長いからかな。ってかリアルで寝起きだったのか?時男の中の人!笑
母親の再婚話に戸惑い傷つく貴子。気持ちは分かるけど、貴子のキャラにしては意外なところ。妙に子供じみている。そんな貴子を川原で慰める健吾と時男。3人のその風景がすごい爽やかで良い感じ。いいシーン。
健吾「どれだけ歩いたら人として認めてもらえるのだろう」
時男「いくつの海を越えたら白い鳩は砂地で安らげるのか」
貴子「友よ、その答えは風に吹かれている」
3人「答えは風に吹かれている」
最後の貴子のナレーション。
「人はどんなときでも優しさを感じるのだ。それは自分が悲しいときに来てくれる彼らに対して。それは彼らが苦しいときにそばにいてあげられる自分に対して」
第4話「涙あふれて」
「自分は都合のいい女じゃない、呼べばどこにでも飛んでくるようなそんな女じゃないのよ」と言い、純に「ごめん、帰る」と言われ、その場を去られてしまった則子が急いで追いかけて「嘘、冗談よ〜。どこでも飛んでくるよ?私。純が来いって言えばどこでも飛んでくる!私なんにもないんだもん。だからね、簡単に寝ちゃったりもするの・・・」と涙が溢れてしまったシーンを観て、なんだか自分を見ているようだなと思った。いや、私はこんなことは言わないけど、何でもいいから傍にいたいと思ってるくせに、私は都合のいい女じゃないのにと悩んでしまって、時にはそれを相手にぶつけるんだけど、結局は自己嫌悪に陥る感じが自分と似てるなって。こんな女、不幸だよね。でも、このときの則子は女の私でも守ってあげたいと思うくらい健気で可愛かった。
時男が警察に捕まり、健吾や貴子に迎えに来てもらって署から出てきたとき、雨の中、心配して駆けつけていたみんなが時男たちに駆け寄って話しかけるシーンが好きだ。
最後の貴子のナレーション。
「足元を誰かにすくわれたように、ふいに自分の進むべき道が分からなくなってしまう。ポツンと空いている教室の空席のような、小さな靄が心の隅にかかって消えない」
第5話「決心」
則子が純の赤ちゃんを妊娠した。ちゃんと付き合ってもいないのに妊娠っていうのは、なおさら女は男に報告しづらいよね。ちゃんと交際してたって妊娠の報告っていうのはドキドキもんだと思うし。きっと喜んでくれるはずって思ってても、心のどこかでは悪いほう悪いほうに考えちゃう。もしかしたらって。だけど妊娠は女だけの責任じゃないのにね。お腹が大きくなるのは女だからまるで女だけの責任のように感じてしまう。真面目に仲良く交際している2人なら一緒に産婦人科に行くのが一番いいね。そしたら、もしも妊娠してた場合、2人はまったく同じ瞬間に一緒の喜びを感じられるんだもんね。
則子「私どうしたらいいかな?」
純「どうって?のりは?」
則子「私はできれば産みたい。純は?」
純「俺は・・・どっちだっていいよ。のりの好きにすればいいよ」
って最悪だよ、純。まず、女にどうしたらいい?って聞かれて、真っ先にそっちは?って聞いちゃう男ダメでしょ。自分の意見はとりあえず棚に上げといて、まずは女の出方を見るってわけですか。自分の赤ちゃんでもあるんだからさ、女だけに押し付けて逃げるなよぅ。
時男と会った帰り道で生徒(山本耕史)に襲われレイプされそうになった貴子。なんてゆうかこの回は男のダメな部分ばかりが描かれちゃってますねぇ。
最後の貴子のナレーション。
「子供の頃、お父さんと見たあのときの雪を思い出していた。白くひんやりとした綿帽子がきっと今の私を隠してくれる」
第6話「見失った道で」
「私、赤ちゃんおろしてもいいよ。だけど、おろしても今までと変わらずに付き合いを続けてほしいの。嫌いにならないでほしいの」という則子。それを承諾する純。おいおい、ダメだよそんなの。不幸街道まっしぐらだよ。それこそ都合のいい女じゃないの。嫌われたくないからって、なんでも男の言いなりになってどうする。
まぁ、それにしても手術室立てこもりはやりすぎですよね(笑)後半の貴子の演説は、完全に自分がレイプされそうになったことへの怒りそのものになってたしね。
自分の夢を捨てることが出来ないから貴子との結婚をやめるという健吾。そんな健吾を結婚しろよ!と殴る殴る、とにかく殴る時男。あんなふうに時男の真っ直ぐな行動を見せ付けられちゃうと、時男さん、私あなたに付いていきますって言いたくなっちゃうなぁ。
最後の貴子のナレーション。
「自分達の今いる場所はどこなのか。誰も教えてはくれなかった」
第7話「風に吹かれて」
尚美が不倫相手に若い独身男性を勝手に紹介されて怒ってたけど、私が尚美だったらああいうとき、その紹介された人とこれでもかってくらいイチャイチャして、めちゃめちゃ好意持ってるーみたいな態度とるけどな。まぁ、そんなことしても、きっとやきもちなんて妬いてくれないんだろうから、結局はまた自分が傷つくのがオチなんだろうけど。それでもあまりにも自惚れた男はムカつくんでね、ギャフンと言わせたいのさ。しかし、惚れた弱みっていうのはなかなか拭い去れないものだよね。
貴子が言った「巡り会えた一人の人間として」ってゆうフレーズすごくいいな。だからといってレイプ未遂の登校拒否生徒が次の日いきなり登校しちゃうってのも極端だけどね。
時男「俺さ、お前が言うようにちょっと真面目に働いてみようかと思ってよ。そしたら・・・一緒に暮らさないか?」
この一緒に暮らさないか?ってフレーズがなんか痺れちゃうんだよねぇ(笑)
最後の貴子のナレーション。
「何かが少しずつ変わっていくようだ。私たち仲間の中でも、見えるもの見えないものの両方が」
第8話「君が人生の時」
すんなり就職できちゃった時男。能力は人並み以上にあるとはいえ、これは奇跡(笑)だって一社しか受けてないじゃんか!すげーな、時男。まぁ、結局は社会の汚い部分を見てすぐに辞めちゃう訳ですが。
純と則子がまた順調にいかなくなって、そんな純は尚美と密会してたり、チョロにはJJという彼女が出来たりなんかして、みんな目まぐるしく色んなことが変化していく。健吾は貴子を忘れるかのごとく、ただがむしゃらに働き、時男もパチンコ屋で働くようになり、貴子は学校でマラソンという新しい試みをスタートさせた。8人のそれぞれの様子がテンポよく映し出されるのを見ていると、こりゃ近いうち何かが起こるに違いない。このまま平穏無事には進まないぞという予感が自然と感じられてしまうのが実に不思議だ。
最後の貴子のナレーション。
「誰に認めてほしいのか。一体私は誰に。その声を否定しながら、冷たいアスファルトを踏みしめていた」
第9話「いつわりの日々」
健吾に「お前は俺のコンプレックスだった」と言えた時男は強い。つくづく時男は真っ直ぐなやつだなと思う。
仕事先の上司との会話で「コンクリートの橋と今にも壊れそうな危ない橋があったとして、危ない橋を渡りたくなるような奴は家庭を持っちゃいけない。女を幸せにできない」ってなことを言われて、ある意味意地になった時男は貴子に「今日泊まっていけよ」とある種の賭けにでる。貴子も貴子で、尚美に「健吾と別れて寂しいから時男にいってるだけじゃない」と言われ、それを否定したい気持ちでいっぱいなのか泊まることを決意する。それにしても「今日泊まってけよ」ってカッコイイな、もう(笑)
貴子のシャツのボタンを外し始める時男の手を止め「お酒を飲んでいたとか、強引だったとか自分に言い訳したくないから」と自らシャツを脱ぎ始める貴子がとても印象的です。また、その手を止めちゃう時男もいい。
則子が流産しそうになり運ばれた病院で、こんなときに純と尚美が一緒だったということを知り、二人を咎め責める健吾に尚美は「健吾には分からない。私や純の苦しみなんか分からない。健吾は完璧な人間だから一人でもじゅうぶん生きていけるかもしれないけど、私たちは違う。健吾と違って弱い人間なの。誰かに寄り添ってないとダメな人間なのよ。健吾みたいに強くないのよ!」と言う。放心状態になり、去っていく健吾。それを追いかける貴子。見つめ合う二人。そこに時男が到着し、「どうした?」と二人を交互に見つめる。「何でもないさ」と去っていく健吾。健吾を見つめ続ける貴子。そんな貴子を見ている時男。やがて見つめ合う貴子と時男。言葉のないこの三人の絶妙な演技、というか神妙な顔つきがあのラストシーンをものすごく意味のあるものにしている。
最後の貴子のナレーション。
「凍りついたように動けなかった。自分の体が二つに引き裂かれた」
第10話「友よ」
この回から貴子がやたら「篤、篤」と呼ぶのにはさすがに違和感を感じた(笑)まぁ、でもあんなふうに言われちゃったら、もうチョロだなんて呼べないけどね。
貴子「(健吾と)別れたのにあんまり電話したり会ったりおかしいと思って」
時男「・・・そんなこと気にするほうがおかしいぜ」
時男イイ奴だな。確かにいい加減な奴だけど、こうゆうとこ誠実ってゆうかフェアで良い。
赤ちゃんって強いのよと繰り返しながらお腹を殴りまくる則子が恐いです。
私、チョロが自殺するって知ってて観てたから、この回を初めて観たとき夜中に則子の病室を訪ねたチョロは既に死んでいて幽霊なのかも、とかって勘ぐってた(笑)自殺することを本能的に察知した則子が見た幻覚だったのかなって。だって野島ってそうゆうことしそうじゃん(笑)全然違ったけど。
傷害事件を起こして行方不明と分かれば、心配してすぐにでも集まってくれる仲間がこれほどたくさんいるのに、チョロだってそれくらい自分でも分かってるはずなのに、それでもあっけなく人は自殺しちゃうもんなんですね。
でも、そんなチョロの気持ちが分かるような気がした。それは、きっとチョロがいるだろうとみんなで合宿所に向かっていた車中での会話の内容で。
貴子「篤、どこかで私たちに劣等感を持ってたんだと思う。だから・・・こんなことになって、みんなに知られるのが一番恐かったんだと思う」
時男「・・・俺たちは仲間じゃねぇのかよ。どうしてそんなふうに思うんだよ…どうして思うんだよ」
貴子のナレーション。
「それっきり、もう誰も口を利かなかった」
ん〜…、きっとチョロは誰よりもプライドが高かったのかもしれないね。だから仲間内でもきっと、ずーっと一人で勝手に孤独を感じていたのかもしれない。
合宿所に着いて首を吊っている篤を見て、全員が放心状態。でも、少し経ってから真っ先に篤を降ろしに走ったのが時男(続けてすぐに純)っていう設定に、キャラの性格がよく反映されてるなと思った
第11話「生きる」
冒頭でいきなり則子の点滴だけをアップで映すあたり、もしかしてチョロは死んでないのかもと視聴者に思わせる演出かな。
JJに会いに行き、線香をあげに来てくれと言った時男がかっこよく見えた。「話が終わるまで待ってくれ」と言っても店員に殴られて、普段ならきっと殴り返すような男なんだけど、力なく「ちょっと待ってくれよ」と言い放った時男がすごく大人にみえた。
JJを葬式に来させたのは篤の死を無駄にしないためか。JJに死んだ篤の姿を見せることで、彼女はもう二度と人を騙すようなことはしないだろう。そして、なにより篤はJJのことをすごく愛していたから、最後に会わせてあげたかったのかもしれない。騙されたと分かっても、決してお金を返せとは言わなかった篤が切ない。
篤の死を受けてみんながそれぞれに様々なことを考える。
「一度でいいから時男のように羽根を広げて生きてみたい」と母に話していた篤の言葉が印象に残っている時男は、パチンコ屋で真面目に働き、貴子を幸せにしようと考え始めていた自分に疑問を抱くようになっていた。健吾は健吾で自分を「一転の曇りもない潔癖なやつ」だと憧れてくれていた篤のことを思い、父が汚職していることに苦しむ。
最後の貴子のナレーション。
「何を憎み、何を拒んだら私たちは報われるときがくるのだろう」
最終回「私達の望むものは」
父親の汚職を告発した健吾を心配し、集まる一同。ケンタッキーとすき焼き、一緒に食べたのか?食い合わせ悪くないか?と余計な心配をしてしまった(笑)
死んだ篤の言葉もあってか、パチンコ屋を辞めてしまった時男。篤が「あんなふうに生きてみたい」と言ってくれた鳥のような生き方をまたしようと思ったのかな。貴子の為に真面目に働いていた部分もあるから、それを辞めてしまうことが‘貴子を諦める’ということだったのだろう。
健吾との潜りの勝負。「自分はわざと負けたんだ」という時男。
時男「けど、健吾は違ってた。あいつ、俺が上がらなかったら死ぬまで潜ってたよ」
貴子「どうして急にそんなこと言うの?」
時男「俺は…お前より自分自身を選んだんだ。自分の小さな箱の中身を知るためによ」
自分にはお前を幸せにすることは出来ないという意味ですね。時男も貴子も切ない。
尚美「あなたが死ぬときは、奥さんに看取られると思うけど、最後に想うのは私であってほしい…」
結局不倫相手の元に戻った尚美。これまた切ないセリフです。不倫だもんね、切ないに決まってますね。まぁ、でもこういう愛の形もありますよね。
健吾「俺もお前がコンプレックスだったよ」
時男も健吾もお互いがコンプレックスだった。まったく正反対の二人だからね。お互いが唯一認めた相手だった。この二人の友情最高だね。男同士の友情はさっぱりしてて良い。
時男「あの頃に戻りてぇな。別に戻れないこともないのか。俺には心配する親もいねぇしな」
健吾「貴子がいるじゃねぇか」
時男「健吾」
健吾「んー?」
時男「貴子は・・・俺は俺でありたい。ずっと俺でいたいんだよ」
川原でのこのシーンも好き。画になります。
最後に貴子が見たみんなの幻。みんな声が響いてて、まるで死んだ人みたいだったよ(笑)まぁ、篤は本当に死んでるんですが。
貴子「私、私、本当はみんなに頼られるような、そんな人間じゃなかったの。本当はそんな強くないの。本当は一人じゃ寂しいの」
健吾「大丈夫だよ、貴子」
時男「お前は一人じゃないんだ」
則子「私たちが付いてるから」
純「いつも貴子のそばにいるんだ」
尚美「そうよ、仲間だもん」
篤「いつまでも変わらない仲間だ」
最後の貴子のナレーション。
「私は出来ればスミレの花のようになりたい。誰かが倒れそうなとき、誰かが泣き出しそうなとき、そっと、そっと支え合う。私たちはスミレの花になりたい」
初見ではそんなに良いドラマだと思わなかったんだけど、観れば観るほど味が出る。セリフの一つ一つが胸に響く。自分が大人になってきたからなのか。社会に出てつらいことがあったら、きっとまた観直してみたくなるような、そんなドラマです。

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