ある子供

出演:ジェレミー・レニエ(ブリュノ)、デボラ・フランソア(ソニア)、ジェレミー・スガール(スティーヴ)ほか
脚本・監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

悲しく切なくもあり、心温まる話でもあった。
ブリュノが我が子を乗せたベビーカーで散歩をするシーン。とてもじゃないけど、命を乗せたベビーカーを押しているようには見えない。赤ちゃんが乗ってるなんて思えないくらい、無神経で無機質で乱暴な歩き方。この演出一つとっても、こうならざるを得ない貧しさや無常さ、ブリュノの父親としての自覚の足りなさ、幼稚さを表している。ブリュノ自身がまだ子供なのだ。
赤ちゃんを売りに出す過程も実に淡々としている。決して悪びれていないところに静かな恐怖を感じる。ソニアが倒れてしまったことで、これはまずいと思い赤ちゃんを連れ戻すあたり、人間臭いというか、すごくリアルな行動だ。
ソニアと子供みたいに楽しくじゃれ合ったり、スティーヴに対して優しかったり、決して極悪人でない、ごくごく普通の感性を持っているブリュノは憎めない。
刑務所でのラストシーンが印象に残る。最高に切ない。二人のあの涙は美しかった。
親になる方法や人を愛す方法なんて誰も教えてくれない。自分の経験でしか、その答えを得ることは出来ない。子供だった、未熟だった青年が父親となる時。その瞬間の美しさといったらない。
ジミーは二人に希望をもたらしてくれた一筋の光だろう。ラストシーンは切ないが、二人の未来がきっと希望の持てるものであると感じさせてくれるシーンだった。
映画を見る前、当然「ある子供」というのは赤ちゃん(=ジミー)のことだと思っていたのですが・・・この作品は深いですね。おそらくブリュノのことなのでしょう。
あの唐突な終わり方、無音のエンドロールは最高のラストでした。感動。

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